はむ吉(のんびり)の練習ノート

主に(競技)プログラミングや言葉について,思いついたことや,試してみたこと,学んだことを,覚え書きを兼ねてまとめます.その際に参考になった,書籍などの紹介も行います.

辞典の語釈に見るなぞなぞ:一般向け国語辞典編―典型からくそなぞなぞまで

私たちが幼いときから慣れ親しんでいる言葉遊びの代表例として,なぞなぞがあります.いくつかの国語辞典の語釈を見ると,さまざまななぞなぞの例が挙げられていることが分かります.この記事では,そのような例を紹介します.

はじめに

言葉遊び,あるいは言語遊戯は,「言語の伝達機能とは別に、ことばの音や文字や意味、表現の形などを利用して楽しむ遊び」のことです*1.例としては,しりとり,しゃれ,早口言葉などが挙げられます.幼いとき,これらの遊びを通じて,自然と言葉に関する学習をしたという人も多いでしょう.また,最近では言葉遊びの要素を含むさまざまなボードゲームが開発されるなど,子供だけではなく大人も,言葉遊びを楽しんでいます.

忘れてはならない,言葉遊びの典型例としては,なぞなぞ(あるいは,単になぞ)があります.その定義は意外と難しいのですが,ある国語辞典は「言葉の中に他の物事の意味を隠した問いを出して、相手に答えさせる遊び」と説明しています*2.「パンはパンでも......」といった古典的なものや,少々意地悪なものから,思わず膝を打つようなものまで,その数は数え切れません.なぞなぞを集めた本を持っていた(あるいは持っている)という人も,多いかもしれません.この言葉遊びも,単なる子供の遊びではなく,より年長の人々にも活用されています.例えば一部の競技プログラマーの間では,「くそなぞなぞ」が盛んに行われています.これは主に「......ってな~んだ」という形式で出題され,しばしばだじゃれや単なる語感の類似性が鍵となっているなぞなぞです.内輪ネタや,アルゴリズムとデータ構造に関する用語が答えになっていることもよくあります.ただ,最近では,より洗練された,高品質ななぞなぞも増えています.くそなぞなぞは「くそみたいに面白いなぞなぞ」であるという説もあります*3が,言い得て妙です.競プロ用語 - 幸せにによると,これらのなぞなぞは,相手が意図していることを推し量る能力を養うための訓練となるそうです*4.それはともかくとして,プログラミングコンテストの前に,頭を柔らかくする効果程度はありそうです.最近では,有志によりくそなぞなぞのコンテストが開かれる*5など,盛り上がっています.

先述のように,なぞなぞを含め,言葉遊びをわかりやすく定義するのは,なかなか難しいものがあります.そこで,各種辞典では,定義に加え,ことば遊びの例を具体的に示すことで,理解の助けとしています.たとえば,新解さんいらっしゃいでは,さまざまな国語辞典を調査し,しゃれ,地口,語呂合わせ,掛詞について,さまざまな例が示されていることが見出されています.また,国語辞典の「しりとり」の例を比べてみた。鳥しばり、「ん」で終わる…辞書ごとに特徴が|Zing!では,しりとりについても,国語辞典における例とその傾向がわかりやすくまとめられています.そこで,なぞなぞについても,各種一般向け国語辞典による例を見てみることにしました.

中型国語辞典

中型国語辞典(収録語数 20 万程度)は,コトバンクなどの Web サービスや,iPhone の内蔵辞書等を通じ,私たちが最も容易にアクセスできる国語辞典かもしれません.まずは,ここでのなぞなぞの例を見てみます.

デジタル大辞泉』の「なぞなぞ」(コトバンク)では,「言葉や文章などの中に、ある意味を隠して問いかけ、その意味を当てさせる遊び」という語釈の後に,次のような例が挙げられています.

浦島太郎の玉手箱と掛けて何と解く。大みそかと解く。心は、あけると年をとる

なるほど,これはうまい.しかし,これは「......ってなんだ」といったよくあるなぞなぞ(二段謎)ではなく,むしろなぞかけ(三段謎)かもしれません*6

なお,中型国語辞典には,ほかに『大辞林』や『広辞苑』などがありますが,いまのところ,なぞなぞの例は見つけられていません.

小型国語辞典

小型国語辞典(収録語数数万~ 10 万程度)は,中型国語辞典よりも収録語数は少ないものの,各語の語釈がより丁寧であったり,類語や同音異義語・同訓異字の使い分けや,ニュアンスといった情報が豊富であったりするといった特徴があります.また,編集方針にもよりますが,そのことばが現在一般に通用しているかの尺度になるかもしれません.したがって,中型国語辞典と合わせて,小型国語辞典も活用する必要があります.このような特徴からか,なぞなぞの例を示す小型国語辞典は,そこそこあるようです.

現代国語例解辞典』は,類語の使い分けや,標準的な表記に関する記載が豊富であるという特長がある辞書です.その第五版の「なぞなぞ」に示された例は,非常にオーソドックスなものです.「言葉遊びの一つ。意外な答えを隠した言葉をいい、そのものを当てさせるもの。」という簡明な語釈に続き,次のような例が挙げられています.

下は大火事、上は大水ってなあに? 答えはお風呂

このなぞなぞは,聞いたことある方も多いと思います.ただ,現代では五右衛門風呂を見かける機会は少なくなっているので,このなぞなぞを理解するのは難しいかもしれません.

三省堂からは,『三省堂国語辞典』と『新明解国語辞典』という性格の異なる小型国語辞典が出されています.前者の直観的語釈や,後者のユニークかつニュアンスのわかりやすい解説は,よく知られているところです.

三省堂国語辞典』第七版では,「あるものについてひねった説明をして、それが何かを答えさせる〈遊び/問題〉。」という語釈とともに,以下の例が挙げられています.

大きくなるほど小さくなるもの、なあに。答え、子どもの服。

確かに,言われたらそうなのですが,どことなく意地悪な感じがするなぞなぞです.答えが一語ではないため,そう感じるのかもしれません.

かたや,『新明解国語辞典』第七版では,「まともに答えると正解にならないような問題を言いかけて、意想外な答えを求めて楽しむ子供の遊び。」と解説があります.「子供の遊び」というくだりが気に入りませんが,ここでは置いておくことにします.挙げられている例は,次の通りです.

「『英語』というのはどこの国の言葉?」という問いに対して、「日本」という答えを期待する

これこそ,くそなぞなぞでしょう*7.なお,旧版(例えば第四版第四刷)では,「日本」が「日本語」になっているという誤りがありましたが,のちに修正されています.このような項目にまで手入れがされているとは,驚きです.

おわりに

このように,「なぞなぞ」一つをとってみても,国語辞典によって語釈や例はずいぶん異なっていることが分かります.国語辞典の項目を,日頃どの程度じっくりと見るかは人それぞれでしょうが,たまにはこういった違った見方をしてみるのも,面白いかもしれません.また,(くそ)なぞなぞの解答や作成にも,国語辞典をはじめとする各種辞典類は大きな役割を果たします.今後,それについてもまとめる予定です.

*1:集英社国語辞典』第三版の「言語遊戯」による.

*2:『岩波国語辞典』第七版新版の「なぞ」による.

*3:cormoran's note - クソなぞなぞコンテスト

*4:ほんまかいな.

*5:関連記事:くそなぞなぞ AGC 002 (KGC002) 参加記 - はむ吉(のんびり)の練習ノート

*6:国語辞典によりなぞなぞとなぞかけの区別の有無は異なるという問題はありますが,ここでは省略します.

*7:誉め言葉です.