はむ吉(のんびり)の練習ノート

プログラミングとことばに関する話題を中心に,思いついたこと,試してみたこと,学んだことを,覚え書きを兼ねてまとめます.その際に役立った,技術書,参考書,辞書,機器などの紹介も行います.

和製の略語 TPO について

社会人の心得として,「TPO をわきまえる」ということは,よく言われるものである.私でさえ,そういったものを意識しないと,なにかと立ちゆかないことは理解しているつもりである.ここで,TPO は「時」「所」「場合」 の意味で,time, place, occasion をまとめたものであるのは,よく知られていることだろう.

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「シンデレラフィット」について

携帯端末を買い換えたと同時に,それを保護するための入れ物も新調した.そこで謳われていたのが,製品に手指が「シンデレラフィット」するということであった.成書の国語辞書やカタカナ語辞書,俗語辞書でこれを載せるものはいまだ見つからないが,『実用日本語表現辞典』*1同項目にはある.要するに,シンデレラの物語で,彼女の足がガラスの靴にちょうど合って,やがて大団円を迎えたということに由来する語で,衣服や服飾雑貨などの業界で,ぴったりはまることを形容することばであるとのことだ.どうやら最近のことばらしく,事実,「少納言」や「国立国会図書館デジタルコレクション」などではヒットしなかった.また一つ,新たなことばを知った.

*1:編集の形態や方針がよくわからない辞書である.調べ物の役には立つが,なかなか参照しにくい.

「おそよう」について

規則正しい生活の重要性は承知していても,休みの日などは,特に何も用事がないのであれば,昼前ぐらいまで寝ていたいものだ.そのような人に向かって使えそうなあいさつのことばに,「おそよう」がある.これは,「おはよう」をもじったことばで,遅くになって起きてきた人を半ばからかうような,ユーモラスな言い回しである.この語はさすがに国語辞書にはないと思いきや,中型の『大辞林 4.0』や,小型の『三省堂国語辞典』第八版*1には載っていた.なかでも,後者はなかなか詳しい.まず注目すべきは,「〔俗〕おそく起きた人〈が/に〉言うあいさつ。」というところである.周りの人が揶揄しつつ言うのみならず,のこのこ起きてきた当人も,おそらくは自嘲的に使うことができるというのは,盲点だった.また,由来の説明も詳しく,戦前からこの語があり*2,文法上は「お遅う」が妥当だが,「おはよう」と音をそろえたことにも言及する.ところで,「おそよう」に対応する英語の表現はあるのだろうか.ふと "Bad morning." かと思ったが,さすがにそれはないか.

*1:一つ前の第七版にはなかった.昔からある語も,使用の実情に応じて追加されることがあるということだろう.

*2:たしかに,「国立国会図書館デジタルコレクション」を見れば,昭和初期の実例がいくつかあった.

「解禁」について

「解禁」には,文字通り,これまでの禁止を解除することだけではなく,より比喩的な意味でも使われるようになった.この点について,『三省堂国語辞典』は第八版で「解禁」の項を手入れしている. 「①禁じられていた状態をなくすこと」という,旧版にもあった語釈に加えて,「②秘密にしていた内容を、公開すること。リリース。」というものも加わっている.ちょうど昨日,某ゲームに関する動画の生配信で,キャラクターやシステム,関連作品などについてのさまざまな情報が発表されたが,これも②の意味で「情報が解禁された」と言ってよいだろう.ただ,微妙なのが「サブスク解禁」で,これは,これまでサブスクリプション型の音楽配信サービスでは聴けなかった曲が,利用できるようになったときに使われる語だ.「禁じられていた」とも,「秘密にされていた」とも言い難い.言葉尻を捉えすぎているのだろうか.

気づかない方言:塩味が強いという意味の「からい」

いままで,「からい」という言葉を,唐辛子などの刺激が強いことのみならず,塩辛いという意味で,普通に使ってきた.例えば,必要以上に塩味の強い料理は,「だだ辛い」と評してきたものだった.しかし,あるツイートを通じて,それがどうも西日本*1の表現であるらしいということをようやく知った.実際に,『三省堂国語辞典』第八版「からい」②には,「西日本方言」として「塩けが(強く)感じられる状態だ」とあった.これも,気づかない方言というものだろうか.こういうことでもなければ,気づかなかっただろう.

*1:当該ツイートでは「西の方」と書いていたが,どうも私にとってはなじみにくい表現である.