はむ吉(のんびり)の練習ノート

プログラミングとことばに関する話題を中心に,思いついたこと,試してみたこと,学んだことを,覚え書きを兼ねてまとめます.その際に役立った,技術書,参考書,辞書,機器などの紹介も行います.

和製の略語 TPO について

社会人の心得として,「TPO をわきまえる」ということは,よく言われるものである.私でさえ,そういったものを意識しないと,なにかと立ちゆかないことは理解しているつもりである.ここで,TPO は「時」「所」「場合」 の意味で,time, place, occasion をまとめたものであるのは,よく知られていることだろう.


このように書くと,一見れっきとした英語の略語のようにも思える.しかし,私は,どこかで,これが和製の略語であると耳にした記憶があった.そこで,辞書を繙くと,実際に,『三省堂国語辞典』第八版や『岩波国語辞典』第八版などが,その旨に言及していた.

それでは,本邦において,TPO という語はいかに使われるようになったのだろうか.『精選版日本国語大辞典』の同項目には,1965 年の実例が,下記のように示されている.

※流行うらがえ史(1965)〈うらべまこと〉一四「帝人が一肩入れた、T・P・O(時間・場所・目的)の思想普及運動」

上記の「帝人が一肩入れた」というくだりからも推察できるが,『流通用語辞典』の同項目によると,「本来は、時、場所、場合に即した服装をすべきだというファッション業界の提案として登場した」という.確かに,今では様々な場面で TPO の重要性が言われるが,TPO と聞いて,まず思い浮かべるのは服装がらみのことだろう.

英語では, TPO にあたることがらをどのように表現できるだろうか.いくつかの和英辞書,たとえば『ジーニアス和英辞典』第 3 版,『ウィズダム和英辞典』第 3 版,『オーレックス和英辞典』第 2 版あたりを繙くと,いずれも occasion を挙げていた.なるほど,time と place は余計だったのか.