「好きこそ物の上手なれ」を英語でどう言うか調べている
ふとしたきっかけで,「好きこそ物の上手なれ」*1を英語でどう言うかが気になった.和英辞書に載っているので,それでよしとしてもよいのだが,そこに載っている言い回しは,どうも英語圏で通用しているのかよくわからなかった.そこで,もう少し調べてみた.まだ途中経過ではあるが,備忘録を兼ねてまとめておきたい.
きっかけは,あるソーシャルゲームだった*2.珍しく,ホーム画面での会話を確認していたが,その一節に,"What one likes, one will do well." とあった.文脈から推測して,おそらくこれは「好きこそ物の上手なれ」ことだろうと推測できた.簡単に Web 検索をしたところ,実際にそういう趣旨のページがいくつかヒットした.ついでに,辞書にもあたってみようと,大小を問わず,いくつかの和英辞書を繙いてみたところ,以下のような結果が得られた.
- 『新和英大辞典』第五版「好き」:What one likes, one will do well.
- 『ジーニアス和英辞典』第 3 版「好き」:You become good at what you like doing.
- 『ウィズダム和英辞典』第 3 版「好き」:You will do well what you like.
「なるほど,英語ではこういうのか.この考え方は洋の東西を問わないのだなあ」と結論づけかけて,ふとわれに返った.あまりにも言い回しがバラバラであり,これでははたして本当に英語圏でこの言い回しが通用しているのか疑わしい.実際に,これらのフレーズで Web や Twitter の検索をしても,日本語圏の投稿ばかりが引っかかるし,逆に,英語圏での実例を探そうとして,英英辞書や SKELL などのコーパスにあたっても,まるでヒットしない.やはり,上述の疑念は正しかったようだ.
それでは,似たような意味をもち,英語圏で使用されうる表現はあるのだろうか.餅は餅屋*3,成句は成句辞書と,『成語林』を繙くと,巻末の「英語のことわざ」に,以下のような言い回しが載っていた.
Who likes not his business, his business likes not him. (自分の仕事を好まないものは、仕事のほうもその人を好まない)好きこそ物の上手
上記のフレーズは,今のところ英語系辞書にあるかは不明だが,少なくとも Web 検索すると英語圏の投稿も多数ヒットし,SKELL でもヒットした.どうやら,英国の著述家 William Hazlitt に帰せられているが,出典にまではあたれていない.どれほど英語圏で広まっているかは不明だが,少なくとも,ありもしない表現ではないということはわかった.