元素にまつわる思い出を辞書とともに振り返る (2):フッ素
予定通り,フッ素 9F に関する思い出を,辞書を参照しつつ振り返ってみる.生徒であったころ,ある化学の試験でいちびって,「弗素」と回答欄に書き,「氵」を赤ペンで書き入れられたことがある.もちろん,「沸素」ではなく「弗素」が妥当なのだが,たとえそうであっても,一般に必ずしも通用しないような書き方をしていては,無駄に点数を失うだけなので,それ以降はそのようなことを避けた*1.なにより,無用に衒学的で,いやみったらしい.そもそも,自然科学では「フッ素」と書くのがふつう(『明鏡国語辞典』第三版)であるから,むしろ化学の試験では「フッ素」と書くべきだったとまで言える.ちなみに,「フッ素」は英名,仏名などからの音訳(『日本大百科全書(ニッポニカ)』,JapanKnowledge よりアクセス)であり,あの宇田川榕菴は弗律亜里涅とあてた(『デジタル化学辞典』(森北出版)第 2 版,同)らしい.どうやら,この場合に「弗」の漢字にそれほど意味はないようだ.
*1:思えば,英語の試験で,increasingly を「漸く」と訳したこともあったか.そのときは理解されたが,採点者によっては知らずに減点されうるからやめるようにと注意された記憶がある.