はむ吉(のんびり)の練習ノート

プログラミングとことばに関する話題を中心に,思いついたこと,試してみたこと,学んだことを,覚え書きを兼ねてまとめます.その際に役立った,技術書,参考書,辞書,機器などの紹介も行います.

「でもしか」と英語で対応する表現について

ふと,「でもしか」という言葉や,これに対応する英語の表現が気になったので,調べてみた結果を備忘録を兼ねて残しておく.少し意味がずれるかもしれないが,どうやら by default あたりがよさそうだ.関連して,by design という句も学べた.


「でもしか」*1は,動物や職業の一種ではなく,「…にでもなろうか」「…にしかなれない」というところから,「―先生」「―研究者」のように,俗語の文脈で,「ほかにする仕事がなくてなった」*2ことを意味する接頭語である(『三省堂国語辞典』第八版).また,これに加えて,『日本俗語大辞典』新装版「でもしか先生」には,「もとは「デモしか」しない先生」からであるという記述がある.なんとなく,昭和後期からの言葉であるように思っていたが,私の感覚はどうやらそう間違っていなかったようで,『精選版日本国語大辞典』には 1972 年の実例があった.

それでは,このような「でもしか」を表現するのに,英語ではどのように言えばいいのだろうか.まさか,demoshika では通じまい.なかなか「でもしか」を立項する和英辞書は少ないが,われらが (?) 『新和英大辞典』第五版は「でもしか」を立項していて,「でもしか教師」に a teacher by default とある.ただ,和英辞書に載っているからと言って,それで終わりにしてはいけない.この by default という句について,別の辞書でニュアンスをもう少しつかんでみたいところである.OALD (10th ed.) の default の Idioms 欄には by default があって,"​if something happens by default, it happens because you have not made any other decision or choices that would make things happen in a different way" と説明する.「…にしかなれない」とまで言えるかはよくわからないが,少なくとも,「…にでもなろうか」,すなわち,とりあえずの成り行き*3でというニュアンスは,by default にもあるようだ.例文としては,"I became a teacher by default rather than by design." とある.これは,ピッタリであるといえるだろう.ここで,by design という句が見て取れる.ここでの design は,同辞書によれば,"a plan or an intention" のことだ.つまり,先の例文には,ぜひとも教師になろうという計画や意図があったわけではなく,まあ,ほかにやることもないしということで,教師になったということだろう.こうやって,芋づる式に新しい語句を学べるのが,辞書の楽しみである.

*1:カタカナで「デモシカ」と書くこともある.

*2:なるべくなら,そうでありたくはないが.

*3:実際に,『ジーニアス和英辞典』第 6 版は,by default の語義 (2) に,「自動的に」「なりゆきで」と記す.