元素にまつわる思い出を辞書とともに振り返る (1):硫黄
今に至るまで,さまざまな形で,元素の周期表に接してきた.そこで,元素を一つ一つ取り上げて,それに関して経験したあれこれについて書き,辞書を頼りに補足することにした.第一弾は硫黄 (16S) である.
幼いとき,「硫黄」でなぜ「いおう」と読むのか,「りゅうおう」ではないのかなどと,不思議に思っていた.おそらくは,熟字訓だとか,当て字の概念がよくわかっていなかったのだろう.ただ,それにしても,「いおう」の読みについては気になるところだ.そこで,『精選版日本国語大辞典』の「いおう」にあたった.そこには,以下に引用する二説があげられていた.
- 「ゆあわ(湯泡)」から「ゆわう」「いわう」と変化したもの
- 「硫」の字音「る」を日本化して「ゆ」と発音した「ゆわう」から変化したもの
なるほど,それなりに納得がいく気がする.「湯泡」というのは,温泉を思い浮かべればよいのだろうか.ちなみに,温泉や火山といえば,「いおう臭」がするというが,もちろん単体の硫黄ではなく,二酸化硫黄に由来するものである.これについては,『現代国語例解辞典』第五版にあった.小型国語辞書で,これに言及するものがあったとは思わなかった.
とりあえず,(1) と表題にナンバリングをつけたとおり,しばらくは続けられそうな話題だ.次は,フッ素を予定しているが,別の元素にするかもしれない.