はむ吉(のんびり)の練習ノート

プログラミングとことばに関する話題を中心に,思いついたこと,試してみたこと,学んだことを,覚え書きを兼ねてまとめます.その際に役立った,技術書,参考書,辞書,機器などの紹介も行います.

その一字,本当にいりますか:期待「値」,同類「項」,方法「論」

数学や哲学などの学術用語が,日常語として転用されている例はいくつかある.表題に挙げた,期待値,同類項,方法論も,それに含まれる.「期待値」は,確率論における用語としてのみならず,「期待する度合い」(e.g. 「―が高い」「―が上がる」,『三省堂国語辞典』第八版)の意味でも使われるし,「同類項」も代数の用語としてではなく,単に「同じなかま」(前掲書)を指して使われる場合もある*1し,「方法論」だって,哲学用語よりも,「こういう方法にしたらいい、という考え方」(e.g. 「独自の―でやる」,前掲書)として見聞きする方が多いかもしれない.ただ,よく考えると,これらは最後の一字を取って,「期待」「同類」「方法」としても同じことであるはずだ*2*3.どうして,わざわざ一字を足して,学術用語に寄せるのだろうか.かっこいいからだろうか.もしかすると,誰かがすでに分析しているかもしれない.

*1:『精選版日本国語大辞典』の同項目には,1930 年代の用例が載る.意外と歴史が長いようだ.

*2:実際に,たとえば『新明解国語辞典』第八版は,「期待値」が単に「期待」の意味で使われうることを指摘する.

*3:ただし,「期待値が上がる」とは言えても,「期待が上がる」は collocation として苦しいかもしれない.